本研究では、窒素透過膜の開発を行うために、一連の金属間化合物について窒素の吸蔵ならびに放出特性を検討した。まず、希土類-鉄系金属間化合物 LnFe_7(Ln=希土類)では、表面にRu/Al_2O_3触媒を付与することで窒素分子が解離し、300-500℃の温度で窒素原子は格子内に侵入することが明らかになった。一方、Ti-Fe系金属間化合物TiFe_2についても同様にRu/Al_2O_3触媒を表面に形成させ、予め水素中、300℃で活性化処理を行うことで構造がアモルファスとなり、これにより窒素は効率良く格子内部に取り込まれることが明らかになった。これを踏まえ、今回導入した二元試料同時加熱型真空蒸着装置を用いて多孔質ニッケル板上に上記の金属間化合物膜(厚さ数百nm)を成膜し、、さらにその上面にRu/Al_2O_3触媒層を付与した。次に、これを反応器に隔膜として取り付け、一方の室(触媒層のある方)に窒素ガス、反対側の室に水素ガスを流し、反応器を300℃に加熱することで、アンモニアの合成を行った。その結果、微量ではあるがアンモニアの生成が確認された。しかしながら、LnFe_7系金属間化合物では反応と同時に膜にクラックが生じ、隔膜としての耐久性に乏しいことが明らかになった。従って、Ti-Fe系金属間化合物を中心に更に研究を進め、TiとFeとの組成の割合を調整することで、耐久性に富む窒素透過膜となることが明らかとなった。なお、今回予定していた固体電解質隔膜を用いる方法でもアンモニアの生成を確認できたが、系統的な結果は時間の制限で今回は得られなかった。今後、引きつづき検討する予定である。
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