有機ポリマーや無機固体の反応媒体としての可能性を探求しているが、最近、シリカゲルがアリル化反応、Wittig反応、水素化反応、ニトロ化反応など種々の反応に大変有効であることを見出した。 アルデヒドのアリル化反応は有用な炭素―炭素結合反応の一つであるが、従来法を工業化するには、副生する環境汚染物質の後処理などいろいろ問題がある。本研究では、シリカゲルがアルデヒドのテトラアリルスズによるアリル化反応の優れた反応媒体になることを見いだした。テトラアリルスズの使用は当量ですみ、反応後スズは無機物になるため有害な有機スズ化合物をまったく残さない。また、反応に用いたシリカゲルは繰り返し使用できる。Wittig反応はアルデヒドやケトンのC=O結合をC=C結合に変換する最も一般的な手段として有機合成に多様されている。しかし、ホスホニウム塩やイリドを一担精製して次の反応に用いるなど多段階を要したり、大量の有機溶媒を必要とするなど、環境的視点からは問題があった。これに対しシリカゲルは有機溶媒にはない分散力と独特な反応場を提供するため、本反応において従来にない優れた反応媒体になることを見い出した。反応は乾燥したシリカゲル上で基質および反応剤類を同一容器中で混ぜるだけで進行し、高収率で目的化合物を与える。また、使用したシリカゲルは何度も繰り返し利用できることを明らかにした。アセトフェノンの還元はシリカゲルを反応媒体として用いるとプラチナ触媒存在下、水素ガス風船を用いて簡便に行うことができる。生成物は反応後溶媒で洗い出すだけで定量的に得られ、触媒を含むシリカゲルは繰り返し使用することができる。ナフタレンのニトロ化反応も、シリカゲルを媒体とすることにより、69%硝酸水溶液を用いて室温下、定量的に進行することを見出した。
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