超高感度・高精度な光計測法であるヘテロダイン微分干渉法を用いた全く新しい近接場顕微鏡を開発し、単一分子・単一ナノ微粒子の複素分極率を計測するシステムの構築を目的として研究を進めた。本システムは、近接場顕微鏡のファイバープローブから照射したレーザー光が単一分子・単一ナノ微粒子によって散乱されたとき、散乱光と照射光の干渉によって極僅かに変化するレーザー光の位相と振幅をヘテロダイン干渉法で検出するものである。光ファイバープローブはナノメートル位置制御用にピエゾ素子で横振動(シェアフォースフィードバック)させるが、この振動により光照射スポット位置が変調され単一分子による散乱状態が変化する信号をロックイン検出(微分干渉動作)することで高感度、高精度に単一分子・単一ナノ微粒子の複素分極率を解析する。本年度は、ヘテロダイン微分干渉顕微鏡システムを構築し、光局在場中におかれたナノメートルサイズの単一微粒子による散乱光と透過光を、もう一方の偏光ビームと干渉させてビート信号を検出し、位相・振幅の変化を解析して単一微粒子の複素分極率を求めた。また、現有のパルスレーザーを試料に照射する光学系を組み合わせ、単一ナノ微粒子の励起状態吸収(過渡吸収)を検出し、光学遅延装置を用いたポンプ・プローブ法により時間分解測定を行い励起状態ダイナミクスを解析するシステムを開発した。現時点では、単一分子の検出まで至っていないが、今後、システムの安定性・雑音対策を進めて精度・感度の向上を図る予定である。それにより、分子一個一個の物理・化学的特性の違いを観測し、分子自身やそれを取り巻くミクロな環境について解析する。
|