研究概要 |
私は、ゼブラフィッシュを用いて神経形成に関わる遺伝子の系統的同定を行っている。その第一段階として私が新しく開発した4,5',8-trimethylpsoralen(TMP)と紫外線をmutagenとした小規模ゲノム欠失の誘発を利用した効率的突然変異体の単離を行っている。中枢神経系に異常があると思われる3系統の変異体については現在クローン化が試みられている。一方で、私は既存のクローン化された発生に関わる遺伝子のより詳細な生体での機能を知るための戦略として、目的の遺伝子をゼブラフィッシュの特定の時期および組織でコンデイショナルな発現を可能にする実験系の開発も進めている。具体的には核酸を不可逆的に化学的に修飾し、生体内で発現が不可能な状態として初期胚に導入し、任意の発生時期に目的の場所にて近紫外線光を照射することで拡散を修飾していた物質を解離させる。修飾を除かれた核酸はその部位でのみ発現することが予想されるので、時期および組織特異的な遺伝子発現を可能にする実験系の確立が期待される。今後は、特定の神経発生に関わる遺伝子ハンテイングを複数のクライテリアに基づいて大規模にスクリーンし、系統的に未知の遺伝子を同定、さらにクローニングする順方向的分子遺伝学の進行に並行して特定の神経発生機能に関与することが示唆されている既知のクローニングされている遺伝子(多くは転写因子をコードするものと考えられる)の実際のゼブラフィッシュ発生過程での詳細な働きを調べる上で極めて効果的な系であると思われる時期特異的・組織特異的な遺伝子発現制御法の精力的な開発を進めている。
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