ラン藻におけるマット形成機構をspirulina platensisを材料として研究した。ラン藻の細菌懸濁液にcAMPを添加すると細胞は凝集運動を始め、マットを形成する。マットの形成には高濃度の食塩が必要である。cAMPは凝集運動を促進させると同時に細胞内ATP濃度を増加させた。本年度の研究においては、阻害剤を用いて、cAMPによる細胞内ATP濃度の増加の仕組みを明らかにする事を目的とした。その結果以下のような事柄が明らかとなった。 1)細胞内ATPの増加は与えられたcAMP量と正の相関を示した。2)ナトリウムチャンネルの阻害剤であるアミロライドでATPの増加が阻害された。3)ナトリウムのイオノフォアであるモネンシンによりATPの増加は阻害されるが、プロトンのイオノフォアであるCCCPやATPase阻害剤のDCCDはcAMPによるATPの増加に影響を与えなかった。これらの事実から、ATPの増加は膜内外のナトリウムイオンの勾配より支えられ、cAMPはナトリウムの細胞内への取り込みを調節していると結論した。
|