ショウジョウバエの培養細胞を用いて概日振動系を再構築することを試みた。本年度は、まず、概日振動を簡便に調べるためのレポーター遺伝子をゲノムに持つ形質転換細胞株の確立を試みた。GFPと分泌性アルカリフォスファターゼを試した。どの発現系においても、レポーター遺伝子の発現は検出可能であったが、薬剤耐性を指標に安定な形質転換細胞を選別しても、全細胞の約20%程でしか充分なレポーター遺伝子の発現が起こらなかった。そこで、用いるショウジョウバエ培養細胞をS2 cellからKc cellとhaploid cellの1182-4に変えて同様の実験を行った。しかし、これらの細胞を用いてもレポーター遺伝子の発現を協力にすることはできなかった。発現が弱い理由として、ゲノムへのプラスミド導入数が少なすぎることが考えられたので、形質転換の方法をリポフェクション法から、プラスミドがゲノムにタンデムに多数挿入されることが期待される燐酸カルシウム法へと変更し、安定な形質転換体を得るための選別マーカーも、比較的強力なZeocinから弱いhygromicinに変えてみたが、効果はなかった。哺乳類の培養細胞で、外来遺伝子の翻訳阻害を起こすdsRNA-activated inhibitorに対して阻害効果を持つ、Adenovirus VAI RNAの効果に関しては現在検討中である。これらの実験とは別に、確立した安定細胞株に対して、高濃度のserum shockをあたえた時に哺乳類で観察されるような概日リズムの振動が誘発されるかどうかを調べたが、明瞭な振動は見られなかった。現在、培養液組成の変更により高濃度のserum shockの効果があらわれるかどうかを検討中である。来年度はdCLKの一過的発現により培養細胞系で概日リズムが誘発されるかを調べる予定である。
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