1.地衣類ウチキウメノキゴケMyelochroa leucotylizaを野外から採集し、地衣体を乳鉢で粉砕し、寒天培地上で培養した。数ヶ月の培養後、こぶ状に隆起した地衣共生体の一部分で菌体のみから構成されている部分を単離し、共生菌単離培養株とした。共生藻類は、地衣体をスライドグラス上で押しつぶし、顕微鏡下で藻類のみを単離し、液体培養し、共生藻単離培養株とした。菌体は、PCRによりrDNAのスペーサー領域の塩基配列を地衣体と比較することにより、地衣体由来の菌であることを確認した。また、近縁種のrDNAの塩基配列を決定し、系統樹を構築した。このことで、確かに地衣体由来の菌であることがわかった。藻類は、外部形態により確認した。 2.「1.」で単離した菌類、藻類を寒天培地上で共培養し、共生体をけいせいさせることに成功した。 3.ウチキウメノキゴケの野外採集した地衣体、(1)で単離培養した共生菌と共生藻、(2)の共培養により形成された地衣体のそれぞれにおいて、超薄切片法、凍結レプリカ法による試料を作成し、透過型電子顕微鏡を用いた形態観察をするための予備実験を行い、固定条件、凍結条件、切片作成条件などを決定した。現在、これらの条件の下、共生菌、共生藻をそれぞれ単離したものと、共培養したときにどのような形態変化がおこるのか、また、野外から採集してきたウチキウメノキゴケの地衣体との形態比較を細胞レベルで観察中である。
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