研究概要 |
日本人の遺伝的構成の時代的な変化を探ることを目標として,まず時代的に比較的新しい江戸時代の試料を対象にDNAの抽出と解析を試みるのが本研究の目的である. 今年度は,予備実験として,現代人の材料を用い、歯からのDNA抽出の試行と抽出されたDNAを用いての解析実験を行った.歯は,青森県および東京都の歯科医院で,歯科治療のため,抜歯されたものである。抽出には,歯根部の一部を切断して使用することにしたが,これは,歯冠部が,計測値や特徴などで形態人類学的な重要な情報を有するためであり,極力そのままでの保存を心掛けている. 切断した歯根部は,液体窒素で凍結後,乳鉢内で乳棒を用いて破砕し,EDTA溶液に1日浸して,脱灰後,プロテナーゼKを反応させ,フェノール抽出によりDNAを抽出した.1本の歯の歯根部よりμg単位のDNAが抽出され,PCR法による解析には十分な量が回収されていることがわかった. 得られたDNAを用いて,ミトコンドリアDNAのV領域の長さの変異,制限酸素HincIIによるRFLPsを,それぞれPCR法を応用して検出したが,どの試料でも良好な結果を得ることができた.また,性別判定やALDH2のタイピング,ABO血液型のタイピングなど,核DNAを用いての解析も試み,結果を得ている. 来年度は,江戸時代人の歯よりのDNA抽出とその解析を行う予定である.青森県八戸市の新井田古館遺跡から出土した人骨の歯を用いる予定である.調査にあたっては,八戸市教育委員会と新潟県企画部の藤田尚氏の協力を仰いでいる.
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