本年度はダイヤモンド薄膜結晶からの光電子放出現象に着目して電子帯構造とNEAの関係すなわち電子親和力の評価を行った。水素などの吸着原子で表面電子状態とNEAの安定化を目指した。安定なNEA半導体エミッターを実現するためこれまでに構築してきた真空紫外分光技術を駆使してダイヤモンド薄膜結晶の電子帯構造とNEAを決める関係について明らかにした。特に、我々のグループにおいて独自に開発した電子顕微鏡(SEM)と一体化した局所領域電子線変調反射分光システムを用いて基礎吸収端光学遷移のみならずブリュアンゾーン全域わたって高エネルギーバンド間遷移をキャッチする事に成功し。これによりNEAの元になっている電子帯構造、特に基礎吸収端との関係を明らかにすることができた。具体的には(1)電子ビーム励起による真空紫外分光システムを利用していずれのサンプルでもカソードルミネッセンス・スペクトルを明瞭に観測した。中でもダイヤモンド多結晶薄膜で信号が観測されたのは特筆できる。(2)熱変調反射測定により5.5eV近傍に基礎吸収端でのフォノン放出に関係した信号を明確にとらえることに成功した。ダイヤモンドの基礎吸収端は間接遷移型であることからこれまでにほとんど観測例はなかったが、このように発光と同時に精密に基礎吸収端を観測できたことの意義は極めて大きいと考える。(3)これら分光評価の結果、ダイヤモンド薄膜において結晶欠陥が関係すると考えられるゼロフォノン吸収が強く観測され、薄膜作成条件によって基礎吸収端構造が強く影響を受けることが分かった。(4)一方、電子放出スペクトル測定のための新しいシステムを構築し励起波長によって明瞭は放出特性の違いを観測するとともに今後のこのシステムを用いたスペクトル分光評価の発展に大きな指針を与えることができた。
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