本研究では、1/60秒時間分解型高分解能電子顕微鏡を開発し法、それを用いて酸化マグネシウム(MgO)(001)表面上を拡散するタングステン原子の動きを直線追跡し、そのデータから電子線照射の影響も考慮して、拡散定数や活性化エネルギーを世界ではじめて求めた。電子顕微鏡が1個の原子を実時間でかつ実空間で観察できる利点を用いてMgO(001)面のステップの上側と下側を拡散する原子のジャンプ頻度や滞在期間の差など、拡散の理論モデルの中でのみ取り扱われていた物理量も測定することに成功した。また金属に媒介された非晶質Ge膜の結晶化を助長する金のクラスターの挙動や二つの金チップの接合に伴うチップ先端部での表面拡散や水素吸蔵過程におけるパラジウムクラスターの構造変化も、1/60秒の時間分解能と0.2nmの空間分解能で直接観察した。
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