研究概要 |
本年度は、スピン偏極型のSTMの実験を行う前段階として,分子線エピタキシー(MBE)とSTMを連結した超高真空システムを完成させ、STM装置を用いてその性能を確認するとともに、貴金属上にエピタキシャル成長させた、Co超薄膜の構造について系統的な検討を行った。 (1)STMの高さ方向の分解能は、0.02nm、ノイズレベルは、0.02から0.04nmであった。ノイズとは別にドリフトがあり、走査線間でレベルの変動が見られた。変動の幅は0.5nm程度であり、回路の修正を行うとともに、データ処理においてドリフトを除去する手法について検討した。 (2)面内の分解能についても、ステップ間の段差がやや不鮮明で不十分であったが、走査方向を往復から1方向に変更した結果、バックラッシュによる像のずれがなくなり、0.5nm程度の分解能が得られるようになった。 (3)MgO(111)基板上にAg(30nm),Au(60nm)の順に室温でエピタキシャル成長させたAu表面は,数nmのなだらかな凹凸で覆われている。この上にCoを成長させると,ほぼfcc構造を取り、表面形状があまり変化しないことから、ほぼCoはAu(111)上に層状成長していると考えられる。 (4)MgO(111)基板上にAg(30nm),Pt(60nm)の順に室温でエピタキシャル成長させた場合もほぼ同様であった。このことから、Au(111)およびPt(111)上のCo超薄膜の垂直磁気異方性への磁気弾性界面異方性の寄与は、Co層が一様に歪んでいるとするモデルで解析できることが分かった。
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