研究概要 |
近接場光学顕微鏡(NSOM)を用いた高分解能による単一分子蛍光検出を試み,以下のような成果を得た.NSOMの心臓部である光ファイバプローブについては,(1)化学エッチングによる二段階テーパー化,(2)試料基板への押し付けによる金属化プローブ先端への開口作製,の2点を工夫した.(1)に関しては,光励起ならびに蛍光検出において金属化テーパー部での強い吸収やカットオフによる光損失を最低限に抑え,高い検出感度を得るためにおこなった.(2)については,色素分子(Cy5.5)を分散させた試料基板ヘプローブ先端を直接押し付けることにより,作製された開口と色素分子が近接場領域まで十分に接近できるよう配慮した結果である.またここでは,真円状,かつ鋭いエッジをもつ開口が得られるなどの副次的効果も確認された.このようなプローブを開発することにより,単一色素分子からの蛍光を15〜30nmという極めて高い空間分解能で検出することが可能になった.これは,励起波長633nmと比較して,その1/20〜1/40に相当し,従来の報告を遙かに凌ぐものである.また蛍光検出効率に関しても,プローブ開口での直接集光により,高倍率対物レンズによる場合と比較して1桁近い感度向上を確認した.特に分解能に関しては,色素分子と金属開口部との無輻射エネルギー移動をそのメカニズムとすることにより,プローブ先端の光スポットサイズよりもむしろ,物理的な開口サイズで決まる性能が得られた.また,この技術を生体分子観察へと応用するためのプローブ改良を検討すると同時に,その予備実験を開始した.
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