太陽エネルギー利用熱電子発電器のエミッタ温度T_Eおよび発電効率ηの評価を行った。太陽エネルギーのみを熱源とする熱電子発電器では、エミッタ加熱とセシウム原子の励起・電離が太陽光で行われる。このため、空間電荷中和がエミッタ加熱と同時に行われることになり、効率の良い発電が期待される。 太陽光により加熱されるエミッタの温度T_Eを、太陽エネルギー入射電力Q_<in>をパラメータとして熱伝導方程式の数値解析より求め、これを発電効率の計算式に代入することにより、T_Eとηの関係が明らかにされる。ここで重要な点は、セシウム中に置かれたエミッタの仕事関数φ_Eはその温度T_Eとセシウム蒸気圧T_<Cs>に強く依存するが、一方でφ_Eはエミッタからの熱電子放出電流J_Rを決定付け、J_Rはエミッタを冷却するのでT_Eに影響する関係にある。これらの関係を全て考慮して得られた数値解析の結果は、タングステンエミッタの場合、レンズ集光率を83%、発電器内部電圧降下を2.2Vと仮定して、Q_<in>=700W、エミッタ表面積=5.9cm^2のとき、最大のηはφ_E=2.6eV、T_E=1800Kのとき、2.2%程度と低い値であった。 ηがこのような低い値にとどまる原因は、エミッタの光吸収率qが30%と低いことにある。この点を改良するために、光トラップ機能を設けたエミッタを考案し、数値解析した結果、qを90%まで高められることが判った。これに基づいて試作したエミッタで実験を行ったところ、光吸収率が60%以上に上昇することが確かめられた。q=90%とすると、φ_E=3.0eV、=2000Kのとき、η=12%まで上昇することが明らかにされた。この値は、太陽電池と同レベルであり、太陽エネルギー利用熱電子発電器の将来性を裏付けるものである。
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