研究概要 |
本研究の目的は,逆問題には解の存在性,一意性,安定性のいずれかが破れているという,いわゆる不適切性があることに着目し,逆問題の数理構造解明を初期値逆問題に適用し、適切化の指針を明らかにする。さらに、カオスに代表されるように、準問題が不適切な初期値問題に対して、初期値逆問題が適切に構築され、安定化解析および超解像解析ができることの可能性を明らかにする。 平成11年度に得られた主な成果は以下の通りである。 1.カオス現象に関連したローレンツモデルおよびナビエ・ストークス方程式に対して,初期値逆問題を解く数値シミュレーションを行った.ただし,ナビエ・ストークス方程式については空間的に1次元に落としたモデルを用いた.これらのモデルに対して,初期値がどの程度推定できるかを明らかにした.非線形挙動が現れる配意であっても時間を遡って推定することができることが明らかとなった.観測値に観測誤差が含まれる場合について,誤差の程度の影響を調べた.ローレンツ・モデルについては,誤差が含まれる場合には推定可能な範囲が挟められることが明らかとなった.これに対し,ナビエ・ストークス方程式については,支配方程式が非線形であるにもかかわらず,観測誤差に対応した程度の範囲で推定が可能であった. 2.弾性場の境界値逆問題について,観測を領域内のとった場合の適切化の手法と適切化パラメータの選定につき検討をおこなった.観測空間で評価した食違い量原理よりも観測方程式で評価したものの方がよい推定を与えた. 3.ラプラス場の境界値逆問題に対して,交替境界要素法を適用し,境界分割による効率化の方法を提案した.
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