研究概要 |
ポリマー(Polystyrene(PS))に液晶(4,4'-Dihexylazoxybenzene(DAN))を含浸させたフィルムを作製した.このフィルムの摩擦力をカンチレバー式の高精度摩擦力測定装置で測定し,温度(DNAの各相),速度及び電場を変えた場合の摩擦特性を明らかにした. フィルムに含浸されているDANがスメクチック相の状態では,流体潤滑にはならないために液晶特有の摩擦特性は見られずに,摺動速度が0.7〔mm/s〕付近から摩擦力する傾向を示した.DANがネマチック相へと変化したフィルムは,極めて大きな摩擦力を発生させた.これは,フィルム内にブレンドしてある液晶が相変化して摩擦力発生主要因が,PS-プローブ間の摩擦から,PS-DAN-プローブ間の摩擦へと変化したためと考えられる.この相での低い摺動速度においては,液晶が結晶あるいはスメクチック相のような状態で作用するため,摩擦力が低いと考えられる.摺動速度0.5〔mm/s〕付近では,プローブ先端が結晶化したDANに食い込み,液晶の結晶をせん断しながら摺動するため,大きな摩擦力が発生すると考えられる.DANが等方相に相変化する温度では,摺動速度が速くなると摩擦力が大きくなった.これは,一般的な流体潤滑と同様に,等方相の液晶分子のせん断抵抗が,摩擦力発生に大きく関与したためと考えられる. 次に,フィルムに200〔V/mm〕の電界を印加した場合の摩擦力変化を測定した.DANが結晶相,スメクチック相及びネマチック相の時,摩擦力変化は極めて小さいことが確認できた.フィルム温度を上昇させDANが等方相の状態で電界を印加した場合,摺動速度が低速の時摩擦力が減少し,摺動速度が大きくなると摩擦力が増加することが明らかになった.
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