研究概要 |
本研究では各種の層状結晶材料の原子間結合の異方性を活用し、ファンデアワールス支持されたナノスライダーを試作する。さらにファンデルワールス支持された部分でスライダーが移動することを確認し、その動作時の駆動力および移動距離、変形状態を原子像などの基準スケールと比較することにより定量的に評価する。この結果として各種ファンデルワールス結合を有したナノトライボエレメントの特性を実験的に解明することを目的としている。本年度の成果を次に示す。(1)超硬質膜形成チップの試作:ナノスライダーを加工し、評価する各種硬質膜を形成した原子間力顕微鏡(AFM)用チップを試作した。具体的には立方晶窒化ホウ素(c-BN)、ダイヤモンドライクカーボン(DLC)膜など超硬質膜の製造装置および形成技術を活用し、シリコンを基材として超硬質材料からなる鋭利なチップを実現した。この時、薄膜形成時の条件を適正化し、複雑形状を有するチップに形成された。(2)ナノスライダーの試作:マイカ、二硫化モリブデンの原子オーダの格子溝の加工試験を行った。加工条件を適正化し、層状結晶材料の積層単位を加工単位とした機械加工を実現した。具体的には、マイカを取り上げ層間距離である1nm深さを加工単位とし、深さ1nm,2nm,3nmの格子溝加工を実現した。さらに、二硫化モリブデンについても積層単位である0.616nm深さを単位とする格子溝の加工を実現し、層間のファンデルワールス力で支持されたナノスライダーを形成した。(3)マイカおよび二硫化モリブデンの格子溝加工により形成されたファンデルワールス支持されたスライダーの動作確認:格子溝加工により形成されたナノスライーダーの中心部に低荷重でチップを作用させ、スライダーを移動させた。その後、荷重ゼロでスライダー部の形状を測定し、スライダーの動きを確認した。(4)上記の結果を発展させ、同一チップでシリコン上にナノメータスケールの隆起と溝を形成する条件を明らかにした。
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