研究概要 |
平成11年度に引き続きパーフルオロポリエーテル(PFPAE)の摩擦試験を行い,摩耗が生じる条件下では基油の分解反応が起こるために潤滑性の向上が達成されないことを確認した.このトライボ化学反応によって有害な有機フッ素化合物が生じるので,PFPAEは高面圧下での潤滑油にはふさわしくないと結論した.そこで低荷重下での評価を行うために新たに円柱と立方体を組み合わせた摩擦試験方法を開発した.これは接触圧0.15GPa程度の線接触機構で摩擦係数が正確に測定できるものである.さらに種々のトライボ材料が評価できるように,任意の材質で調整が容易な形状の試験片を組み合わせているのがこの方法の特長である. これを用いて分子量が異なる直鎖PFPAEおよび分岐PFPAEの摩擦特性を評価した.分岐PFPAEの高粘度タイプは摩擦係数が0.1程度で安定した潤滑性を示した.直鎖PFPAEの高粘度タイプでは摩擦係数が0.15程度であるがこれも安定した潤滑性を示した.一方,分子量が小さい低粘度タイプのPFPAEは,直鎖型も分岐型も摩擦係数が0.1から0.2の範囲で変動した.このように基油の粘度によって摩擦特性の違いが見られたので,目的の潤滑性を達成するための添加剤技術の方針が明らかとなった. PFPAEの含フッ素潤滑油原子の一部を塩素原子に置換した化合物はPFPAEによく溶解し,低粘度の直鎖PFPAEおよび分岐PFPAEの潤滑性を大幅に改善した.摩擦係数は0.12前後で安定しているが,さらなる性能向上と添加剤の低濃度かが必要であることを見出した.
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