研究概要 |
Taylor渦を利用した,血液等におけるダイナミックフィルターの開発を目指して,本年度実施した結果を計画と照らし合わせながら述べる。 粘弾性流体は,高分子ポリイソブチレン/トリクロロエチレン/低分子ポリブテン系の試料溶液を調合して作製した。すなわち,高分子ポリイソブチレンをトリクロロエチレンに均一分散させた後,低分子ポリブテンに入れ,乾燥温度50℃のもとで数週間乾燥させトリクロロエチレンを取り除くことによって,均一分散された粘弾性流体を得た(この実験に当たっては本年度申請した乾燥機を使用)。ただし,血液粘度はヘマトクリット値(赤血球が血液中を占める割合)と流れのせん断に大きく依存される。通常ヘマトクリット値は40前後であり,せん断率:1[s^<-1>]以下で非ニュートン性が顕著に現れ,粘度は60mN・s・m^<-2>程度を示す。せん断率の上昇とともに,粘度は急激に低下して約20mN・s・m^<-2>になる。今後は溶液の調合率を変え,このような血液の非ニュートン性に近づけることを試みる。 Taylor渦の流動特性を調べる実験では,上記粘弾性流体はまだ試行段階であるとして使用しなかった。渦構造を解析する実験では,グリセリン水溶液(ニュートン流体)を用い,粘度はヘマトクリット値40における,最大粘度60mN・s・m^<-2>を参考に調合した。Taylor渦発生装置の作製にあたっては,内円筒を剛体にしたプロトタイプを完成させ,渦の発生機構をArシートレーザ光による可視化によって調べた。この結果,特にアスペクト比(内外円筒半径差と装置の高さの比)が1前後になると,あるレイノルズ数で振動モードが発生することを捉えた。このモードはダイナミックフィルタの濾過性能に大きな影響を与える因子として,今後さらに解析を進める予定である。 流体解析用ソフトは,ニュートン流体に関して3次元コードの開発をほぼ終了し,解析に入った。 以上
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