研究概要 |
近年,液体を扱う流体機械は,その用途拡大に伴い様々な過酷な条件下での運転が余儀なくされ,その性能向上,とくにキャビテーション発生に伴う流動抵抗の増加や性能低下は解決すべき問題の一つとなっている.本研究は,近年,著しく発達してきた表面被膜材料の高質化と高度処理技術化を流体機械要素(とくに翼面)に応用して性能改善の可能性を探るとともに,利用上の問題点を明らかにすることを目的とし,(1)流体機器実機を利用した,表面被膜処理が機器の全体性能に及ぼすマクロ的な影響調査と(2)翼面被膜処理が物体周りの流れ構造に及ぼすミクロ的な影響調査に2面から探究している.研究の性格上,比較実験となることから,本年度は,被膜処理前の性能・流れ様相の調査に重点を置き,まず,項目(1)については,低レイノルズ数での運転が余儀なくされる低落差用ダリウス形水車とキャビテーション伴った運転となるポンプインデューサについて流れ場構造と性能との関係を実験計測するとともに被膜処理等による抗力低減が性能向上にもたらす効果を定量的に解析した.また項目(2)については,単独翼(NACA0012使用)試験装置を製作し,その流れ場とキャビテーション発生様相のデータ集録を行った.ついで,被膜には超撥水性と超親水性を持つものの2種類に分けられるが,超撥水性被膜としてHIREC^R100(NTT-AT製)を採用し供試翼面に処理して,被膜処理前と同様な実験計測を行い,現在,その結果の比較を行っている段階にある.今後は,超撥水性被膜による実験を速やかに完了させ,超親水性を含めた他種の被膜材料を用いた調査を行い,被膜処理による性能改善の可能性と利用上の問題点を明らかにしていく予定である.
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