密度の異なる2つの流体が形成する安定な成層に、外部から熱が侵入したり、2層界面での熱・物質移動があったりすると、両層の密度がしだいに接近し、その差が十分に小さくなると成層は不安定化し、上下層の逆転あるいは急激な混合に至る.この現象は「ロールオーバー」と呼ばれ、自然界では大気層や湖沼等で起こることがあり、工業的には液化天然ガス貯蔵タンクやソーラーポンド等で生じた場合、安全上・保安上の問題となる. 本研究者は、以前このようなロールオーバー現象の発生メカニズムについて実験および解析を行い、容器内で発生するロールオーバーでは、下層の流体が鉛直側壁に沿って上昇し、2層界面を突き抜けて上層内に侵入する現象が重要であることを確認した.ただしこの場合、下層流体の上層への侵入は、熱の侵入のある側壁面ではどこでも一様に生じる、2次元的な現象であると考えていた. ところが、いろいろ条件を変えて実験してみると、下層流体の上層への侵入は必ずしも2次元的ではなく、ほぼ一定の間隔を持った筋状の上昇流が観測される場合もあることが最近確認された.側壁面からの熱の侵入が一様な場合に、このような現象の発生は理解しにくいが、実験的に再現性がある以上、そのメカニズムを解明すべきであると考えて本研究を行った. 本年度は、アクリル製直方体容器内に、上層を蒸留水、下層を着色した食塩水とした密度成層を作り、側壁を一様に加熱して浮力対流を発生させ、(1)筋状流が観察される場合の上下層の密度差を測定することにより、筋状流の発生条件を確認し、さらに(2)筋状上昇流が不安定化して別の流動パターンへと移行するプロセスを観測した.現在までのところ、筋状流の発生メカニズムを明らかにするには至っていない.
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