本研究は、非線形現象である対流熱輸送を対象として、その能動制御の実現性を実験的かつ数値解析的に検討することを目的とする。 その第一歩として、まず学習型非線形制御系であるニューラルネットワークによる流体混合均一化の能動制御の数値解析を行った。一様温度・速度で流入する主流の中心から、高温・高速で流入する並行流を対象として、高温・高速流体の流量をオン/オフ制御することによって下流側の温度分布均一性を制御できることを数値解析的に見い出した。この結果を利用して、幾つかのプラントル数について、最も迅速に温度分布均一性を実現できるオン/オフ制御パターンを探りあて、次に任意のプラントル数に対して迅速な温度分布均一性を実現できる制御系をニューラルネットワークを用いて構築し、その効果を検証した。 乱流スカラー輸送の能動制御を実現する実験として、工学的応用価値の高い衝突噴流を用いた高温壁面の迅速・均一冷却を取り上げた。衝突噴流はよどみ点近傍の熱伝達率が高いため、その領域の壁温が低くなる。本実験は、そのような温度不均一を最小にしつつ、効果的な高速冷却を行うことを目的とする。制御方法としてサーボモータによる噴流ノズルの首振り機構を採用し、壁温分布をモニターしながら噴流ノズルの向きをフィードバック制御する。柔軟な制御系を実現するための市販ソフトウェアを導入し、ニューラルネットワークを含む幾つかの制御方法を検討している。
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