研究概要 |
斜張橋に使われている斜材ケーブルには,ウェークギャロッピングと呼ばれる自励振動が発生することがよく知れている.この振動は,2本のケーブルが直径の3倍程度の間隔で平行に張られている場合に発生しやすく,励振エネルギーが高いことに特徴がある.特に,台風が頻繁に通過する九州,四国では,ケーブルの損傷の可能性が高く,何らかの対策が施される必要性がある.従来は,ケーブル端部にオイルダンパを設置するという対策やケーブル同士をワイヤで連結するなどの対策が取られてきたが,メンテナンス性や景観上の問題から,これらに替わる方式の提案が望まれている.この研究で提案する方法は,最近,注目を集め始めた強磁性材料のネオジウム磁石を利用して,空気力学的に不安定な振動モードを安定な振動モードに切り換えることによって斜張橋斜材ケーブルをパッシブの方法で制振しようというものである.具体的には,ケーブルの先端部に設置した永久磁石によってケーブルの変位を拘束したり,開放したりすることで,ケーブルの振動モードを空力的に不安定な低次モードから空力的に安定な高次モードへ変化させる. 本年度は,これまで続けてきた制振方法の原理の構築を設計論へと発展させ,プロトタイプを設計,製作し,風洞実験を行い,理論モデルによる解析結果と風洞実験での実験結果との比較を行った.また,金沢市河北潟放水路に掛かる斜張橋斜材ケーブルにプロトタイプを取り付けて,振動発生時の制振性能の評価を実際に行い,有効性を確認した.また,これまでの研究成果を,日本機械学会論文集に発表した.
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