研究概要 |
急激な輻射加熱を受ける柔軟ブームに生じる熱誘起振動のメカニズムのシナリオは以下のようであると考えられる.まず,急激な加熱によって生じる加熱前面と後面の温度差に基づく熱曲げモーメントの発生により,加熱源から遠ざかるようにブームに曲げ変形が生じる.この曲げ変形の結果,ブームへの熱入射量が減り,加熱前面と後面の温度差は小さくなり,熱曲げモーメントが減少する.熱曲げモーメントの減少は曲げ変形の減少となり,このことはブームヘの熱入射量の増大を招き,加熱前面と後面の温度差の増大となり,したがって,熱曲げモーメントが大きくなり,曲げ変形も大きくなる.このように,柔軟ブームの熱誘起振動では,周期的な熱曲げモーメントが励振力となり,ブームの振動を持続させていると言える.このことは適切に位相を制御した熱曲げモーメントを加えることで,逆に振動を制御できることを示唆しており,本研究のアイデアを得た.本研究の主要設備として,出力5Wの半導体レーザー装置(Opto Power社製)を導入した.まず,導入したレーザー装置の加熱能力確認試験を行なった.柔軟ブームモデルとして,直径3mm,肉厚0.1mmのステンレス製パイプを用い,レーザービームスポットから左右45°,上下2mmおよび背面に,クロメル-アルメル熱電対を取り付けた.レーザー装置の出力を20%,40%,60%,80%,100%と変えて温度測定を行なった結果,定常状態で加熱前面と後面の温度差として,60°あった.ただ,出力80%,100%ではパイプ表面が変色していた.今回の予備実験で一応の温度差の得られることが判明した.
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