本年度は微粒子がブラウン運動を行う各種基板の製作を主に行った。試した方法はシリコン基板を対象にしたエッチングによる方法と金属基板を対象にした放電加工による方法である。シリコン基板は望み寸法まで精密に作れるが耐久性において劣り、一方、金属基板は寸法精度が甘く、現状では幅10ミクロンの溝が精一杯であったが、耐久性においてははるかに優れている。アルミナ粒子とこの両基板の適応性は共に良好であり、どちらも実験系として用いることができたが、金属基板はブラウン運動の基板としては寸法精度がまだ不充分であり、今後の改良が必要である。また金属基板の表面処理も現在の機械加工のレベルでは不充分で何らかの対策が必要である。シリコン基板を用いた実験系では、円形の微小穴の中で微小粒子はほとんど並進運動なしに回転運動のみ行うことができ、観察系として優れた特質を持っていることが明らかになった。また、基板上における微粒子の並進運動も回転運動も、その分散が理論値とよく一致していることが確かめられ、本研究の観察系として充分な能力を持っていることがことが確認された。これらの観察は、市販のレンズを特別に組み合わせた光学的顕微鏡システムの画像を、ビデオカメラで撮影する方法で行い、充分な有効性を確認した。
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