本年度は昨年度に完成した実験システムを使って、アルミナ粒子をシリコン基板上でブラウン運動させ、データを取得した。アルミナ粒子の大きさを変化させても理論値と実験値の一致は良好で、実験システムの信頼性が確認できた。並進運動については過去に多くの観測例があるが、回転運動については少なく、本実験システムのデータは貴重であると考えている。 並進運動では粒子がブラウン運動により短時間に顕微鏡の視野外へ出てしまうのに対し、並進移動を拘束した回転運動では、長時間の運動の観察が可能である。 さらに、シリコン基板上に幅10ミクロン程度の溝を作り、その上でアルミナ粒子をブラウン運動させると、良好な条件下ではアルミナ粒子が溝にトラップされ、一列に整列することを見出した。この現象は、微小な構造を持った材料の製作や大きさのバラバラな微粒子の選別等に応用できる可能性がある。現在までに、粒子の大きさが溝幅より大きなものはトラップされず溝を超えて移動できることが観察されている。
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