研究概要 |
本研究では,数種類の物質の基板(シリコン,アルミ,クロム,プラチナ,二酸化チタン等)を用いてその表面に水や各種イオンを含む水溶液を滴下した後に基板と液滴の間に直流電圧を印加し,このときの液滴の濡れの変化をマイクロスコープ形CCDカメラを使用して目視により観察を行った.表面に結晶方位<111>の面を持つN型のシリコン基板と純水を用いて,基板側に正,液滴側に負の電圧を印加した場合,半球形状の液滴が基板表面で濡れ広がることが約8Vの印加電圧で確認された.また,逆電圧を印加した場合には液滴の広がりは観察されなかった.同じシリコン基板に対して0.01mol/lの硫酸ナトリウム水溶液を用いて実験を行ったところ,シリコン基板側に負,液滴側に正の電圧を印加したときに0.5〜2.5Vと純水の場合よりも小さな電圧で濡れが広がることを確認した.また,このようにして液滴を少し広げた後に逆電圧を印加すると完全ではないが液滴がもとに戻っていくことを確認した.この濡れがもとに戻る現象は純水では確認できなかった.これより,電圧印加によりシリコン表面の親水化現象が生じていることが予想される.現在までに実験に用いた基板でシリコン以外は上述のような液滴の濡れの変化は観察されなかった. 結果より固体表面での液滴の濡れの変化は,基板材料,液滴の溶質,印加電圧の方向とその順序に複雑に左右され,またこれまでの実験では目視による確認にとどまっているために正確に現象を把握できていない.定量的な測定と理論的な考察による現象の解明が今後の課題である.
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