技術の進歩に伴い、ロボットは我々の生活に身近な存在になってきた。今後は高齢者の看護などを目的とした人間と直接関わりあうロボットの登場が期待されている。しかしロボットが実際に人間と時空間を共有することになると、多くの効用と同時に様々な弊害をもたらすことも予想できる。そこで本研究は人間とロボットが円滑なコミュニケーションを行うために必要な要素を工学的視点から解明することにした。しかし現時点で人間とロボットとの関係を取り扱うのは困難なので、進化的に古い生物としてラットを用い、ラットとラット形ロボットとのコミュニケーションを取り上げることにした。 今回作成した実験システムは、画像処理PC、ラット形ロボット、ロボット操縦PCの3つの部分で構成されている。画像処理PCは、実験フィールド上部に取り付けたCCDカメラの画像をもとにラットとラット形ロボットの位置をリアルタイムで算出する。ロボット操縦PCは画像処理データをもとにラット形ロボットを操縦する。また、開発したラット形ロボットは、外見をラットに似せている、FM無線による遠隔操縦、両輪駆動、首振り機能、立ち上がり機能、などの特徴を持つ。 作成した実験システムを用い、ロボットがラットへ乗りかかり行動を行った場合と行わない場合のラットの行動を比較する実験を行った。この実験により、ロボットの乗りかかり行動がラットの興味を持続させ、さらにラットからロボットへの乗りかかり行動が発生することを確認した。これにより、ロボットがラットの乗りかかり行動を模倣することがラットとのコミュニケーションに有効な機能であると推測される。
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