本研究はディジタルゴースト現象に基づく画像用データ・ハイディング方式を新たに提案し、その基本特性を理論と実験の両面から確認することを目的としている。本研究で得られた新たな知見等の成果は次の通りである。 1.まず、ディジタルゴースト画像のケプストラム分析に基づいて透かし情報を抽出する方法をz変換で定式化し基本特性を調べた。その結果、透かし抽出時に原画像を用いない「公開透かし」の場合は、ゴースト画像のケプストラム中に特殊な雑音(バイアス成分等)が存在して、単一ラインのケプストラムから透かし情報を検出することが困難であることがわかった。一方、透かし抽出時に原画像を用いる「秘密透かし」の場合は、単一ラインにおいてゴースト画像と原画像とのケプストラム差分から透かし情報を安定して検出できることがわかった。 2.次に、指数窓をかけたときのケプストラム差分をz変換で定式化し基本特性を調べた。その結果、ゴーストの混合率aが大きい「可視型ゴースト画像」の場合には、指数窓のパラメータαを小さくして高次のケプストラムピークを減衰させることによってエリアジングの低減効果を持つことがわかった。一方、ゴーストの混合率aが小さい「不可視型ゴースト画像」の場合には、透かし情報が埋め込まれた低ケフレンシでのケプストラムピークを抑圧しないようにパラメータαを1に限りなく近づける必要があることがわかった。 3.最後に、テスト画像への透かしの埋込み実験を行い、ゴースト画像と原画像のケプストラム差分から透かし情報が検出可能どうかを検証した。その結果、不可視型ゴースト画像(混合率a=0.1、遅延M=2)において、M系列データによる透かし情報(256ビット)をケプストラム差分から比較的安定に検出できることがわかった。
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