研究概要 |
本研究は,超大規模計算処理要求,特にマルチメディア信号処理,通信,制御,シミュレーションなどの分野における数値計算処理を対象に,その高速算法を理論的かつ系統的に導出するためのモデル・原理の解明とULSI,WSI実現を前提としたアルゴリズム自動最適化の理論を確立することを目的としている。平成11年度においては,大規模な数値計算アルゴリズムを効率的に表現するためのベクトル化と階層記述を混在させたデータフローグラフ表現:Vectorized Hierarchical Data Flow(VHDF)Graphを考案し,このグラフ表現上での記述変換によるアルゴリズム変換の可能性を検証した。 VHDFグラフ表現は,計算アルゴリズムのブロック的階層記述や帰納的階層記述を許容してアルゴリズム構造を記述するグラフ表現である。計算アルゴリズムの構造変換に際して,アルゴリズムの構造解析が重要であるとの立場に立ち,VHDFグラフ記述上での等価変換操作を明確にすると共に,部分同型構造および部分帰納構造を認識・抽出するための手法を検討・導出した。次いで,行列の逆行列計算を実例として,VHDFグラフのアルゴリズム表現能力,アルゴリズム変換能力の検証を行い、Gauss消去法を初期アルゴリズムとして,VHDFグラフ表現上での変換のみで幾つかの再帰的計算アルゴリズムが導出できることを確認した。
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