本研究では、振動を伝達する従来法とは異なり、固体表面と空気との間で熱の授受を高速に行い、熱による空気の膨張、圧縮によって超音波を発生する新しい原理のデバイスを提案し、その実現を試みている。本年度は特に高い音圧を効率よく得るための電極パターンと時間的駆動方式を提案し、それを利用した非線形音響効果の観測をおこなった。さらにその応用について検討した。 1.高域まで平坦な周波数特性を有するという理論的予測を実験により確認した。 2.入力波形に忠実なインパルスを発生可能であることを確認した。時間幅1μsec、ピーク音圧10Paのインパルスを発生可能であることを実験的に確認した。 3.発熱電極を島状に空間局在させ、その島の径を微細化していくと、その半径に反比例して同じ投入エネルギーに対する発生音圧が増大することを理論的、実験的に示した。 4.熱誘起超音波の駆動方法として、短い時間間隔にエネルギーを集中する駆動方法によって音波の発生効率が向上することを理論的に示した。すなわち平均投入エネルギーを一定とすると、エネルギー投入時間が全体の時間に占める割合に反比例して発生音のエネルギーが増大する。この性質を実験によっても確認した。 5.上記の駆動方式を利用して本デバイスを非線形音響効果デバイスとして利用可能であるかを検討した。熱誘起超音波を収束し、放射圧を観測する実験を行った結果、新しいマイクロアクチュエータ等への応用可能性が示唆された。
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