都市生態学という最近の研究分野では、A-Lifeという人工知能によって支援される都市空間解析の研究が盛んである。この分野の特徴は、対象地域を開放系として扱い、「学習」・「進化」過程を取り込んで状態を記述する点にある。本研究は、わが国で研究の少ないA-Lifeモデルにおいて進化の部分に遺伝的アルゴリズムの新たな開発と応用を行なったものである。 具体的には、ニューラルネットワーク(NNモデル)によって学習された都市の市街化過程を遺伝的アルゴリズム(GAモデル)を用いて時間的に進化させるA-Life都市モデルを構築し、具体的な都市圏を対象に都市開発プロジェクトが都市整備過程に与える影響を記述した。研究対象地域はフィリピンのメトロマニラ都市圏であり、主な研究成果は次の2点である。 (1)土地利用を入力層に人口を出力層としたNNモデルを1990年と1995年の2時点で作成し、この変動をGAにより時間進化させた。その結果、現状再現性(相関係数で0.89)のあるA-Lifeモデルが構築できた。 (2)このモデルを使って人口変動の将来推移をシミュレーションした。その結果、開発途上国の首都圏で起ると言われている人口爆発の可能性を示唆でき、都市インフラ整備を進めて副都心化を図り人口分散する施策の有効性などの回避策を提示できた。
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