研究概要 |
処分場に多く埋め立てられると考えられるプラスチック類や、焼却残さから浸出する可能性のある物質に関して、ヒト乳癌細胞MCF-7を用いたアッセイを適用した。これは、内分泌撹乱性を決定していくための1次スクリーニングとしてUSEPA,EDSTACで提唱されている方法である。また、遺伝毒性試験用umu-testはドイツ排水令や、ISOに取り上げられている簡易スクリーニング法である。遺伝毒性とエストロジェン様の細胞増殖活性性という両毒性を廃棄物試料のモニタリングヘの適用性を試み、かつ実際に試料のどこに着目して安全性を検討していくのかを考察した。 その結果、MCF-7細胞による試験により、焼却灰や浸出水の抽出物で最大増殖活性や最大増殖濃度が得られることがわかった。その検出濃度は、遺伝毒性試験に比せば10^<-8>程度の低さであり、エストロジェン様の活性を示す試験が極めて微量の濃度で検知されることが示された。またこの結果は、GC-MS分析により同定されたプラスチック由来の物質とは必ずしも一致しなかった。処理水中には、これが処理過程で生成あるいはフミン質より脱着した物質による発現であるかは判然としないが、こうした活性に関しては今後モニタリングの必要性を提起する。飛灰中にもエストロジェン様の細胞増殖活性、遺伝毒性が観察できたが、複数の焼却設備間でのこれらの毒性指標と処理方式の間に必ずしも明確な因果関係を見いだすことはできなかった。 このような、未知の物質が混在している廃棄物の、管理現場から環境に接するポイントでは、その安全性は極めて厳しく管理されていくべきであり、その観点から、複数のバイオアッセイの組み合わせによる比較検討は有意義なものと考える。
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