平成11年度には、本研究で提案した柔らかい床剛性を考慮した木造住宅のねじれ挙動の評価法を、地震応答計算と、実大平屋建物の静的破壊実験を行い、理論の妥当性を検証した。それらの結果は、おおむね良好であった。本研究成果として、床の必要耐力の算定法が提案されると共に、本研究と平行して、転ばし根太床などの剛性やせん断耐力の評価法も提案された。それらの成果を踏まえて、平成12年度に施行された住宅の品質確保の促進等に関する法律の「木造住宅の構造安定に関する基準」において、床倍率の概念が導入された。 平成11年度の解析研究では、壁配置と重量配分のバランスの悪さに起因する建物全体の捻れによる変形が、柔らかい床剛性に起因する局部的な床変形の増大と比べて1桁小さいことが明らかとなった。そこで、「見なし規定」として位置づけられる品確法の壁量計算では、剛床仮定による建物全体の捻れの計算を省略し、床に作用するせん断力による床のせん断変形のみを検討の対象とする。その際、終局耐力時に各壁線の耐力の加算則が成立するためには、各壁線のせん断力-層間変位の関係における塑性域が重ならなくてはならない。そのためには、床に作用するせん断力のみから床のせん断変形を算定し、制限する必要がある。また、床に作用するせん断応力度を検定すれば、建物の捻れによる床の先行破壊は防止できる。このような考えに基づいて床倍率の概念が提案された。
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