初年度は、九州全県のグループホーム(以下GH)への調査票郵送調査と中国地方3県(GH19ホーム)の訪問調査により、有効回答201ホーム・入居者833名の1次分析、平面構成では102ホーム・入居者427名を対象とした2次分析を行った。その結果、GHの住戸面積は、既存住宅利用に比べて新規建設が大きく上回り、居室の形態も新規建設で「個室化」が進んでいる。一方、各居室面積は就寝領域とわずかなくつろぎの領域程度、自立生活を向上させるための水回りの諸設備は、居室にはほぼ未設置であった。すなわち、現時点では居室の「個室化」が当面の目標水準とされ、「まかないつき下宿」(イナック型)の域を出ていないのが現状である。 これを踏まえ、今年度は居住水準向上を志向した「改良型」GHを対象に分析を行った。既往の資料に基づき、横浜市・島根県浜田市・大分県内所在のGH29ホームを抽出、129名の入居者に関するインタビューおよび調査票調査を実施し、以下の類型的把握の必要性を仮説的に示した。 (1)平面構成:公的な空間(居間・食事室など)を中心とし、これに近接して居室を配置する「集団生活型」と、居室のプライバシーや設備充実を優先した「自立生活型」に大別される。 (2)居室水準:個人の収納および就寝、余暇行為に加え、整容や排泄・入浴・食事などの生活行為が、面積的・設備的にどこまで許容されているかで、分類・評価される。 (3)居住者ニーズ:入居者の住要求が、上記各項目の空間的条件とうまく適合させるべきこと、さらに、これまでの居住歴に伴いニーズが変化・発展することも考慮し、これを反映させるべきこと。 引き続き、入居者の住まい方の特徴を捉え、上述の仮説的要件の検証を行うとともに、個々人で異なる多様な住居へのより詳細なニーズについての類型的把握を進めているところである。
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