本年度は、関係文献を収集し、その整理を進めた。シリア北部の初期教会堂に見られるシリア式アンボについて、過去の現地調査報告書を詳しく検討したほか、ハギア・ソフィア大聖堂については、アンボ関連の文献を検討した。アンボという視点から東地中海の初期教会堂を類別し、特に中心部の形成とアンボの関係に注目してハギア・ソフィア大聖堂のアンボを再検討するという方法で、諸資料の分析・考察を進めている。年度末には、ダンバートン・オークス研究所で関連文献の収集を行い、現在その内容の検討を進めている。アンボに関する既往研究のまとめ、初期教会堂中心部の分析に対するその有効性、および建築史、音楽史、典礼史にまたがる学際的特徴等については、別記のように、研究協力者の単著論文として成果の一部を発表した。研究の萌芽的性格から、現在のところ、将来の展開の基盤となる方法論的考察を進めており、基礎的資料の収集と並行して関連分野の研究者との意見交換を行っている。初年度の研究は、ギリシャ語文献の理解等に苦労して具体的成果に結実していないが、建築史、音楽史、典礼史に関わる境界領域での研究に見通しが出たので、次年度は具体的研究成果をまとめる方向で対象を絞って研究を進める。
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