研究分担者 |
河村 憲一 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (50270830)
二唐 裕 東北大学, 科学計測研究所, 助教授 (90006148)
川田 達也 東北大学, 科学計測研究所, 助教授 (10271983)
八代 圭司 東北大学, 科学計測研究所, 助手 (20323107)
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研究概要 |
ペロブスカイト型ABO_3,スピネル型AB_2O_4等の複酸化物が元の酸化物AO_2,BO等から生成する生成自由エネルギーは金属の酸化等に比べて極めて小さい.従って,複酸化物を挟んで化学ポテンシャル差が与えられると,熱力学的にはこの複酸化物は容易に元の単純酸化物に分離する筈である.この分離はイオン移動を伴うため,この現象がどの程度起こるかはイオンの拡散がどの程度起こるかによって決まると考えられる.本研究では固体酸化物燃料電池材料であるペロブスカイト型酸化物LaMnO_3,YCrO_3などを主なモデル物質として取り上げ,この腐食分解現象の実在を検証し,併せて理論との整合を明らかにすることを目指す. 本年度の実績は以下の通りである. 1.理論計算:単純酸化物の固溶体など,複数のモデルケースについて.腐食分解が起こるまでの固体内の組成の時間変化を固体内の輸送方程式に基づき有限要素法で計算した.その結果,1000℃以上であっても固溶体組成が広い系では腐食分解に至るには観測可能な範囲を超え,例えば数百年を要する可能性が解った.一方,各金属元素の位置が定まっている複酸化物では,顕著な量の腐食分解には長時間を要するが,微量分析で観測できる程度の析出は数百時間以内で起こる可能性が見出された. 2.LaMnO_3系の通電分解の試みと結果:高温所定温度で緻密試料板のそれぞれの面を異なる酸素雰囲気に数百時間保ち続けることが実験的に容易でないため,燃料電池電極での問題解明も考慮して,直流を長時間流して何が起こるかを調べた.緻密LaMnO_3板に点接触するPt球を押しつけ,1%酸素雰囲気1000℃で300時間1Aの直流を流した.その結果,プラス極近傍に顕著な酸化マンガンの析出がSEM-EDAXにより初めて確認された.この現象の解析と合わせて,昨年度行っていた酸素ポテンシャル勾配下での実験を次年度に再開する.
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