自己組織化したメソ構造のテンプレートとして、ハロゲン化アルキルトリメチルアンモニウムを選び、これを酸性触媒下アルコキシシランを出発物質とするシリカのゾル-ゲル過程に共存させて、相分離の誘起の有無およびメソ孔構造の特性長と規則性を調べた。ゾルーゲル反応によって得られたゲルは、乾燥後600℃において熱処理を行い、界面活性剤を除去した後にX線回折測定によるメソ孔の規則性の評価と、電子顕微鏡及び窒素吸着法による細孔構造の評価に供した。まず、ゲル形成時反応温度が高いほど、相分離によるマクロ孔構造の得られる出発組成領域は広くなったが、反面メソ孔構造の規則性は低くなった。界面活性剤に含まれるハロゲン化物イオンについては、塩素と臭素についてメソ構造形成に対する効果には差異が認められなかったが、相分離傾向に関してはイオン半径の小さい塩化物イオンの方が強くなった。また、アルキル基の影響を炭素数を16および18の間で比較したところ、炭素数18の界面活性剤を共存させた試料がより高いメソ孔容積を示し、相分離をも助長することが明らかになった。X線回折による規則性の高さは、ほぼ相分離傾向と一致していた。結論として、長いアルキル鎖と小さい対イオンを含み、シリカ重合対との相互作用が強い界面活性剤ほど、規則性の高いメソ孔構造を誘起するとともに相分離を助長することが分かった。本年度研究では、研究計画全体のうちバルク体ゲルにおける規則的多重細孔構造の発現を確認するにとどまったが、同様の原理は薄膜についても適用可能と考えられる。
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