研究概要 |
研究の目的と計画 希土類イオン含有ガラスを分相させることによって生じる不均質界面での光散乱を利用すれば蛍光の発光効率が大きな透明ガラスセラミックスを作製できるので蛍光強度の増大メカニズムを詳しく解析するとともに,異なる分相処理条件(熱処理濃度・時間,超音波表面前処理(UST))で作製した分相ガラスの蛍光強度、分相組織と組成,フォノンサイドバンド,蛍光寿命を検討して検討して光閉じ込め効果など分相界面での光散乱現象を利用した高効率発光材料の作製を試みる。 平成11年度の成果 ガラス中の希土類イオンは、光励起によって4f軌道内遷移による発光を示す。この光遷移は、古くはガラスレーザーとして、最近ではアップコンバージョン蛍光や光増幅などの面から注目されており、均質なガラス中の希土類イオンの発光特性については多くの報告がなされているが、分相ガラスを希土類イオンの光学ホストとして用いた例はほとんど報告されていない。異なる誘電性界面を有する分相ガラスにおいてドープした蛍光付活剤の発光特性を向上させることができるのではないかとの考えから、分相したガラス試料(ガラス組成:6Na_2O・31B_2O_3・63SiO_2[mol%]・5Eu_2O_3[wt%])の吸収スペクトルと蛍光スペクトルの測定を行ったところ、吸光度と蛍光強度は共に分相前に比べて増大するという結果を得た。分相後、ガラスはシリケートリッチな相とボレートリッチな相に分離したが、各々の相自体の可視透過性が良いため、ホストの光吸収による吸光度の増大とは考えにくく、吸光度が増大したのは分相によって生じた界面による光散乱が増大したためであると考えられる。蛍光強度が増大したのは、界面により励起光が散乱され、発光に関与するEu^<3+>の数が増加したことによると考えられる。蛍光強度と光散乱の相関について詳細な検討には至ってない。さらに蛍光スペクトル測定から蛍光強度を見積もるとともに、透過・吸収・拡散反射スペクトル測定から光散乱強度を評価し、蛍光特性と光散乱特性の相関について定量的検討を加えた。Eu^<3+>を含有する分相していない均質なガラスに熱処理を施し分相させると、均質なガラスの強度を上回る蛍光が観測された。分相処理温度を固定し、保持時間を変化させて熱処理した場合、蛍光強度は熱処理時間が約6時間までは増大し、それ以降はわずかながら減少した。熱処理時間が約6時間までは、分相によって生じた界面により励起光(464nm)が散乱され、発光に関与するEu^<3+>の数が増加する効果が支配的であり、それ以降は蛍光波長付近の透過率が低下し、ガラス外に放出される蛍光が減少する効果の寄与が支配的になるものと考えられる。蛍光強度が極大を示したガラスの分相粒径は約300nmであった。熱処理時間を固定し温度を変化させて分相処理した場合、蛍光波長付近(600nm)の光散乱の寄与が小さい時は蛍光強度は励起波長付近(460nm)の光散乱強度に大きく依存することが分かった。
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