研究概要 |
<目的>摩擦攪拌接合法では,まず板の突合わせ面に沿って突起つきの回転工具を挿入し,ついで摩擦熱で材料が軟化してから工具を並進させて強制的に材料を攪拌し,突合わせ面を消失される.その際,高温での強加工により,攪拌部にはしばしば等軸的で微細な再結晶粒組織が形成されるため,継手は優れた機械的性能を発揮する.本研究の目的は摩擦攪拌処理が金属の新しい組織制御法になり得るかを実験的に探ることにある. <方法>供試材は板厚6mm,平均結晶粒径44μmのマグネシウム合金AZ31熱間圧延板である.別途行なっている摩擦攪拌接合用に設計・試作した突起高さ6mm弱の回転工具を用いて,回転数440〜2650rpm,送り速度22〜123mm/minの範囲で,板の圧延方向に沿って摩擦攪拌処理を施した.処理材から摩擦方向と平行に引張試験片を切り出し,温度623k〜723k,歪速度3×10^<-4>〜1×10^<-1>s^<-1>の範囲で引張試験を行った.摩擦攪拌処理前後および高温引張試験後の組織を,光学顕微鏡,走査電子顕微鏡により観察した.一部,鋳造用合金についても摩擦攪拌処理の改質効果を調べた. <結果>以下のように要約される. 1)摩擦攪拌処理後の結晶粒径を決めているのは工具の送り速度よりも回転数である. 2)最適条件では,攪拌部の結晶粒が処理前の44μmから8μmまで減少した. 3)摩擦攪拌処理材は未処理材に比べて高い室温強度を示した. 4)摩擦攪拌処理材は未処理材並みの超塑性しか示さなかった.これは変形速度が高すぎたためと考えられる. 5)鋳造材でも摩擦攪拌処理により結晶粒を均一微細化することができた.
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