本研究の目的は弗化物溶融塩にTiO_2を溶解させて金属チタンを得る直接電解法の基礎研究である。この方法は高品質のAl-Li合金を溶融塩電解によって高い効率で製造した実績に基づくものである。特徴としては、隔壁を用いて、原料酸化物をアノードに近傍に留めカソードに析出する金属を清浄に保つことにある。しかし、弗化物溶融塩を用いるために、Al-Li合金の場合のようなセラミックス製の隔壁は用い得ない。そこで金属隔壁を用いることにしたが、金属隔壁は電導性であるために電気化学反応を起こす可能性があるため、その影響を検討する必要がある。 本年度は、水溶液を用いて模擬実験を行った。アノードおよびカソード電着させる金属にニッケルを選び、電解浴は硫酸ニッケルとした。多孔質隔壁としては、観察のためには電着金属と異なる方が都合良く、また電着金属より不活性なものとして銅を選んだ。銅の網を数枚重ねてプレスし、多孔質となるようにした。この際、銅網にメッシュの異なるものを用い、重ねる枚数を変えて内部の通液性の異なるものを用意した。電解浴濃度、電流密度、隔壁のメッシュ等を変えての実験を継続中である。また溶融塩を用いての実験を行うために加熱炉およびステンレス鋼製の反応容器を製作し、溶融塩試料の溶解実験を行っている。電解浴はNaF-KF系にK_2TiF_6を混合したものであり、電解温度は700〜800℃を予定している。水溶液を用いた基礎実験の結果を受けて、先ず酸化物無しの条件で始め、最終的には酸化物からのチタンの製造を行う。
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