研究概要 |
Bi系高温超伝導体は基板および自由表面近くでc軸配向するがバルクの内部では配向化は困難である。超伝導特性のうち、臨界電流は結晶の配向性に強く影響されるため試料全体の配向性をコントロールすることが重要である。強磁界中での凝固は、晶出物の形状や磁化率の異方性により配向が可能で、Bi-2212超伝導体の配向化の研究はなされてきたが、Bi-2223相に対する研究はまだない。 本研究では、Bi-2223組成(Bi_<1.8>Pb_<0.4>Sr_<1.9>Ca_<2.1>Cu_<3.5>O_x)の試料を8Tの強磁界下で、種々の温度で半溶融後、種々の速度で凝固・冷却し、その後840℃で240h熱処理した。また、人工的のピン止め効果およびBi-2223相の生成能を期待して、種々添加物を加えて同様の溶融処理および熱処理を行った。主な結果は以下に示す。 1.磁界の有無にかかわらず、半溶融で生成する超伝導相はBi-2212相であった。 2.無添加試料の配向性を、表面および界面の影響を受けない内部を切り出してXRDにより調べると、半溶融温度870,875および880℃、その後の冷却速度0.5〜5℃/hでは、配向性は875℃,2℃/hが良く、SEMによる組織観察とも一致した。 3.その後の840℃-240hの熱処理で、生成していたBi-2212相は配向性をそのまま引き継いでBi-2223相に転換した。 4.Bi-2212相およびBi-2223相の配向化にともなう異方性はVSMによる磁化測定からも確認された。 5.ピン止め効果およびBi-2223相の生成能を期待してB_2O_3,MgOおよびAg_2Oを添加し、強磁界下で処理した試料では、0.05%B_2O_3の添加は配向性は改善しないがBi-2223相の生成に有効であり、MgOおよびAg_2Oの添加はBi-2223相のc軸配向を無添加試料より高いことが分かった。
|