無機-有機粒子の複合化の一般的手法を開発することを目的として、本年度は、磁性流体存在下でスチレンモノマーを用いた異相系重合反応を行い、系内の粒子分散安定性を制御することで、大粒径の磁性体複合微粒子の合成を試みた。磁性流体としては、酸化鉄超微粒子をオレイン酸ナトリウムとドデシル硫酸ナトリウム(SDS)により表面処理したものを用いた。重合はモノマーとしてスチレン、開始剤にはアニオン性ラジカルを発生する過硫酸カリウム(K_2S_2O_8)を用い、種々の反応温度および攪拌速度で行った。はじめに磁性流体をそのまま用いて複合化を行ったところ、粒径が小さく、磁性体含有量の少ない複合粒子と単独のポリスチレン粒子が観察された。これは溶媒中に遊離しているSDSの吸着により粒子の表面電位が増加しことが原因であると思われるので、遊離のSDSを遠心分離により除去し複合化を行った。その結果、磁性体含有量の多い大粒子が合成できたが、大粒子に取り込まれない微小なカプセル粒子も残存していた。これは、SDSの吸着により粒子表面電位が上昇し、微小カプセル化粒子が大粒子に取り込みにくくなったと考えられる。そこで、次に、粒子表面電位を低下させる目的でカチオン性界面活性剤を反応途中で添加して複合化を行った。結果として、微小カプセル化粒子の発生は抑えられ、反応途中で粒子表面電位を制御することで無機-有機複合大粒子の合成が可能であることを示した。
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