研究概要 |
本研究では、高度好塩菌の細胞膜に存在するバクテリオロドプシン(bR)の光電流応答の発生機構を解明し、bR分子を固定化した高機能光デバイス構築の指針を得ることを目的とし、bRの配向制御固定化および電極界面特性と光電流応答との関係について検討した。 1,bRを含む紫膜の懸濁液をポリリジンで被膜した酸化スズ電極上に静電相互作用により吸着させた。懸濁液のpHを変えることにより紫膜表面の負電荷分布を変化させ、bRのプロトン放出側および取り込み側が電極に向いたbR単分子膜固定化電極を作製した。 光電流応答の極性はbRの配向により変化せず、光照射の瞬間にはカソ-ド電流が、照射を止めた瞬間にはアノ-ド電流が観測された。光電流応答はbR分子内部の電荷移動によるものではなく、プロトン放出と取り込みによる電極界面の電気二重層でのpH変化に由来することが判明した。 また、懸濁液のpHによる光電流応答の強度は、紫膜細胞の内側と外側の負電荷密度の大きさが逆転するpH5付近で急激に増加した。bR分子の配向が光電流の感度に寄与していることから、分子配向制御によるデバイスの高感度化と高機能化が期待される。 2,表面の水酸基をシランカップラ-で消滅させた酸化スズ電極にbRを固定化した。シラン化処理時間が長いほど、すなわち電極表面の水酸基が少ないほど光電流応答が小さくなることが判明した、この挙動は、プロトン放出、取り込みによる界面のpH変化により光電流が発生するメカニズムを支持する。
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