一つのピロール環が反転し、環外周の窒素と、環の中央を向いた内部炭素を持つ反転(混乱)ポルフィリンは、多様な反応性を示す。(1)内部炭素と求電子剤、(2)外周Nの隣りのα炭素と求核剤、(3)外周Nとアシル基が反応し、各々、ニトロ体とアルキル体、シアノ体、エナミン体を与える事を見いだした。さらに、内部炭素にアゾベンゼン基の導入に成功し(X線構造で確認)、母体ポルフィリン環の第一π共鳴に第二のπサーキットを結合できた。このようなπ系の拡張は、通常のポルフィリン環では不可能である。 環内部に炭素を配位子として持つこのポルフィリンは、銅(II)と極めて錯体を形成しにくかったが、反転ピロール環外周α位にシアノ基を導入することにより銅錯体の単離に成功した。その他、バラジュウム錯体の単離も行い有機金属性の配位子としての魅力も見いだした。これら非対称性の分子を非線形光学特性に展開させるためにフォトリフラクティブ効果の基礎実験を行い、高分子液晶の使用がマトリックスとして可能である事もみいだしている。
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