研究概要 |
カルコゲノン及びヘテロアリルアニオン系の解明を進め、以下の結果を得た。 1.チオ及びジチオカルボン酸の構造 単純な構造のチオ及びジチオカルボン酸(4-CH_3C_6H_4COEH,E=O,S)についてX線構造解析を行い、両者はチオ及びジチオカルボキシル基が向き合った2量体で、平面構造であることが明らかとなった。また、チオカルボン酸の炭素-酸素及び炭素-硫黄間の距離は、それぞれカルボニル基の二重結合および炭素-硫黄単結合である。一方、ジチオカルボン酸の2つの炭素-硫黄結合は異なり、二重結合と単結合の2種類存在する事が明らかとなった。チオカルボン酸単分子の分子軌道計算からは、逆の結果が得られた。 2.チオ、セレノチオおよびジチオカルボン酸カリウム、ルビジウム、セシウム塩 芳香族チオカルボン酸のカリウム、ルビジウム、セシウム塩は2つの金属カチオンを共有した二重体構造であり、チオカルボキシル基のC-OおよびC-S距離はそれぞれ二重結合と単結合を示し、陰電荷が硫黄上に局在化した構造をとっていると見られる。対応するジチオカルボン酸カリウム、ルビジウムおよびセシウム塩は2つの金属カチオンを共有した二量体である。ナトリウムとカリウム塩はジチオカルボキシル基の二つのC-S結合距離が異なり単結合と二重結合距離を示し、陰電荷は単結合で結ばれた硫黄上に片寄っていると見られる。一方、ルビジウムとセシウム塩のそれらはほぼ等距離で、単結合と二重結合の中間の値を示し、陰電荷はジオチカルボキシル基上に非局在化していると見られた。 セレノチオカルボン酸アンモニウム塩の合成も開発できた。
|