炭素-炭素不飽和結合に種々の官能基を導入する反応は、有用な分子構築手法として、有機合成反応に広く利用されている。その一つの方法論として、遷移金属触媒を用いる多数の反応が開発されているが、その多くは後周期遷移金属錯体を用いる反応である。本年度、前周期遷移金属の特性を活かした新しい触媒反応系の創出と、その合成化学的応用を目的として、ジルコノセン及びチタノセン鎖体存在下、アルケン類と種々の試薬との反応を検討した。その結果、アルキドハライド及びクロロシラン類を用いるアルケン類の新しいアルキル化及びシリル化反応を見出した。まず、ジルコノセン触媒を用いて、クロロシランによるアルケン類のシリル化反応を検討した。その結果、Grignard試薬存在下で、末端アルケン類が位置選択的にシリル化されることを見出した。また、アルキル化剤としてアルキルブロミド類を用いることにより、アリールアルケン類の位置選択的アルキル化が進行することを明らかにした。一方、チタノセン触媒存在下、アルキルハライドを用いるアルケン類のアルキル化反応を検討し、チタノセン(III)のアート型錯体を活性種とする位置選択的ダブルアルキル化反応を開発した。さらに、チタノセン触媒系を用いるシリル化反応について検討し、アルケン及びジエン類のカルボシリル化及びダブルシリル化反応を見出した。また、これらの成果を、日本化学会第76春季年会、日本エネルギー学会関西支部第44回研究発表会で研究成果発表を行った。
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