研究概要 |
チオフェンよりラセミ体ならびに光学活性なヘリセンジオールを合成した。ラセミ体ヘリセンジオールをエタノールやクロロエタンから再結晶すると,これらの溶媒分子を結晶中に取り込み,クラスレートを形成することを見出した。また,右巻きヘリセンジオールは自己集合により四つ葉のクローバー型の超分子組織体を形成することを見い出した。次に,これらクラスレートや超分子結晶のX線結晶構造解析を行ったところ,いずれの結晶中においてもヘリゼンジオールは水素結合によるネットワークを形成しており,ヘリセンのらせんのピッチは周りの環境に応じて大きく変化していることが明かとなった。すなわち,ヘリセンの末端のチオフェン環の二面角は33.8°から54.5°と20.7°も変化しており,61%もピッチが伸びている。ヘリセン骨格の結合距離はほとんど同じであることから,これらの結果はヘリセン分子がバネの様に伸び縮みしていることを示している。
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