カイコ4齢幼虫の原白血球をMGM-450培地を用いて単細胞培養した結果、平均3日以上の生存が見られ、また、細胞分裂と異種細胞への分化が観察された。分裂率は6%程度であったが、幼虫体液との混合培地では分裂率は向上し、分裂率は体液添加量の多いものほど高く、添加量50%の倍地では24%の細胞で分裂が見られた。細胞分化は、顆粒細胞、プラズマ細胞への分化が主で、小球細胞に分化するものも若干の細胞で観察された。細胞分化は、細胞分裂していない原白血球と分裂後の原白血球の両方で見られた。細胞分裂は2回引き続いておこることもあり、また、分裂によって原白血球だけが複製される場合、原白血球と異種細胞の両方がつくられる場合、異なる2種類の異種細胞が作られる場合、などが認められた。これらの結果は、原白血球が自己複製能を有すること、複数の別の血球種に分裂する多分化能を持つことを示すもので、本血球種が幹細胞の性質を持つものであることが示唆された。また、分化率と分化の方向について、カイコ5齢2日、4日、6日目の体液を用いて比較した結果、6日目の体液を添加した培地では分化率が低いこと、2日目と4日目の体液では、顆粒細胞とプラズマ細胞への分化の配分が異なること、などが明らかとなった。これらの結果より、原白血球の分化は体液成分の影響を受けることが示され、内分泌的制御を受けている可能性が示唆された。
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