東北大学遺伝生態研究センターに保存・維持されている野生イネおよび栽培イネの茎および種子から、Rennieの半流動培地を用いて窒素固定菌を分離し、16SrRNA遺伝子の全塩基配列を決定し分子系統解析を行ったところ、茎からの窒素固定菌は、全てグラム陰性のHerbaspirillum属、Ideonella属、Azospirillum属および腸内細菌科の4大グループに属していた。野生イネの茎からは、Herbaspirillum属、Azospirillum属、腸内細菌科の窒素固定菌が、栽培イネの茎からは主にIdeonella属の細菌が分離された。栽培イネ在来品種の種子からはグラム陰性菌としてはSphingomonas属、グラム陽性菌としてはPaenibaccilus属細菌が分離された。最高分けつ期の茎の窒素固定菌数をMPN法で計数したところ、野生イネの茎の窒素固定菌数は、10^5オーダーと高く、一方、栽培イネの窒素固定菌数は10^3-10^4と低く推移した。野生イネのRennieの半流動培地の分離過程のバイアスがかかった条件化ではあるが、同一圃場で栽培したにもかかわらず、野生イネと栽培イネの茎の窒素固定菌のマイクロフローラは大きく異なり、野生イネの方が窒素固定菌数が高く、多様性に富んでいた。野生イネの茎の密度の高い窒素固定菌の由来を調べるために、種子の室素固定菌数をMPN法で計測したところ、野生イネ種子のみに10^6オーダーの窒素固定菌が検出され、野生イネでは種子伝達により窒素固定菌が伝播される可能性が示唆された。
|