高度好熱菌Thermus thermophilus HB27株では、現在そのゲノムプロジェクトがドイツで進行中である。プロジェクトは間もなく完了する予定であり、今後は遺伝子の機能解析が大きな課題となっていくことが予想されている。このような状況に鑑み、T.thermophilus HB27株における生育に必須な遺伝子機能の広範な解析の基盤とすべく、T.thermophilus HB27株の温度感受性変異株ライブラリーの作製を目指した研究に着手した。 T.thermophilus HB27株由来のプロリン要求性変異株TH104株を親株として、ニトロソグアニジン処理、もしくは紫外線照射によって、70℃では生育出来るが77℃では生育出来ない株の分離を試みた。その結果、数百株の温度感受性変異株候補を得た。これらについて、親株由来の性質が保存されているか(栄養要求性マーカー、色素生産能、形質転換能など)のチェック、及び生育の温度依存性の安定性のチェックを行った。その結果、8割以上の株がTH104株由来の温度感受性変異株として利用可能であることが確認出来た。 次に、これらの中からランダムに選択した12株について、それらの変異を相補出来る野生株DNA断片を、あらかじめ作製してあったHB27野生株DNAライブラリーからスクリーニングした。12株のうち11株について変異を相補する野生株DNA断片が得られた。これら断片の染色体上の存在部位を、これら断片をプローブにしたゲノムの制限酵素切断パターン(パルスフィールド電気泳動解析)に対するハイブリダイゼーションによって検討したところ、11種の断片がすべて異なる遺伝子に由来するものであることが確認された。 以上の結果から、本手法によって分離されたHB27株由来の温度感受性変異株が、極めて多様な遺伝子の変異を含むものであることが明らかとなった。
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